埼玉の関口社会保険労務士事務所


企業のメンタルヘルス対策は社会保険労務士でこの分野に明るい者におまかせ下さい。

産業カウンセラー等のメンタルヘルスに関する資格をもった社労士は多いですが、私は大学時代に心理学を専攻と しましたので、心の問題に取り組んで30年余りです。心理学を修めたことから社会人に なって研修を受けて取得したのが特別民間法人中央労働災害防止協会認定の心理相談員です。 それと卒業した大学の心理学会に所属しておりますが、心理学会としては日本最大の公益 財団法人日本心理学会認定の認定心理士の認定を受け、継続的に研鑽に努めております。

 

ある日突然、部下が、同僚がうつ病をうったえる

 メンタルヘルスは新しい問題ですから、多くの会社で予防対策が万全というケースは少ないです。そのため、メンタルヘルス不調者が現れて、その対策をしていくという場合が多いです。事例としては、職場で部下や同僚が、ある日突然にうつ病をうったえるなどとい場合が多いのです。そんなときでも、あわててしまっては間違った判断でメンタルヘルス不調者への対応をしてしまうことにもなりかねません。事実、間違った判断で貴重な人材を失ったり、さらには原因は会社にあるのではないかというような疑問を投げかけられてしまうこともあったのです。社労士、産業医、精神科の意思等の詳しい専門家に相談して対応するべきです。

メンタルヘルス不調とは何であるか

 メンタルヘルス不調とは、心の健康を害してしまったという事を指します。メンタル=心について、ヘルス=健康状態を、不調=調子を悪くしたということです。以前は、メンタルヘルス不全という呼び方をしていましたが、不全というのは相当深刻な印象を与えるので、改められました。働く人で心の健康を害した人のことも、メンタルヘルス不調者と呼びます。





誰でも、小さな企業でも、メンタルヘルス不調になる可能性あり

 ストレスに満ちた社会となっている表れでしょうか、従業員数名の事業所でもメンタルヘルス不調者が発生するようになっています。幸いに発生していない事業所では、「うつ病とかの問題は大企業での問題だよ」と考えられがちですが、実績がものをいう、というわけで私たちもどんな規模の事業所、企業でもありえますよ、と警告を発しています。今では、すべての事業所に予防、発生時、発生後にわたり対策を立てておいていただく必要があるのです。




予防が第一、メンタルヘルス不調者が出てから慌てて対策を取るよりも

 メンタルヘルス不調者が現れてから、後追い気味に対策をとるというケースが多いのですが、身体の健康管理と同じように予防が何と言っても一番大事で、対策として最も効果的です。例えば、風邪を引いてしまってからですと、直るのに時間がかかったり、直っても完全に直るまではぶり返すケースも多いということがあります。心の病気もまったく同じように考えられます。悪くすると良くするまでに、本人にも周りにもとても多くの労力がかかります。メンタルヘルス対策の必要性を理解いただいたら、まず予防対策からです。



厚生労働省が企業が行う指針として出した4つのケア

 メンタルヘルスは、個人的な理由で悪くする場合もあれば、仕事が関係することもあります。それでも、悪くしないことがまず大切です。そして、会社には労働安全衛生法等で従業員の安全配慮義務、健康配慮義務がありますから、対策を実施しなければなりません。厚生労働省では、本人と会社が行うべきメンタルヘルス対策の指針として「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(メンタルヘルス指針)」を策定しました。そして、その中で4つのケアが重要であるとしています。その4つのケアとは、
1.セルフケア
 労働者本人による、ストレスへの理解と気づき、ストレスへの対処、自発的な対応等です。
2.ラインによるケア
 職長、管理監督者による職場環境等の改善、個別の指導・相談などです。
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
 人事担当者、衛生管理者、産業医、事業場の看護師・カウンセラーなどによる、職場の実態の把握、個別の指導・相談、ラインによるケアへの支援、管理監督者の教育、研修などです。
 事業場内産業保健スタッフが不在の事業場では、社会保険労務士がその役割を支援します。
4.事業場外資源によるケア
 外部の医師や医療機関、医師会、中央労働災害防止協会、地域産業保健センター、労働衛生コンサルタント、臨床心理士、産業カウンセラーなどがメンタルヘルスの支援を行うことです。

まず最初は自分自身でストレスケアなど習慣づけましょう

 セルフケア:自分の健康状態は普段から自分で状態をチェックして管理するのが一番です。小さな変化などは外からではわかりませんが、そんなわずかな変化でも自分で注意しているとそれ以上悪くさせないことができます。ただし、メンタルヘルスは自分で気がつかなかったり、重大なことになると思わないことが多く、この点は注意が必要です。悪化させると場合によっては仕事ができなくなるという危険性があるものだという理解の元に、身体と同じように自分の心の健康状態、ストレスがかかりすぎていないかなど日常的にケアをして下さい。そして、ストレスがたまっているなと思ったら体操や趣味・気分転換などでストレス解消をするなど、すぐに対処することが大切です。その日たまったストレスはその日のうちに解消してしまうことを習慣付けるなどまめに心のケアをしましょう。














メンタルヘルスケアのカギを握るのは管理職です

 ラインによるケア:メンタルヘルスを悪化させると、本人が自分の心の状態について判断が間違ってしまっていきます。この段階まで進むと危険信号がともっているのと同じですから、管理職が部下の健康状態を把握しているかが重要になってきます。顔色が悪いな、元気が無いななど些細な変化に気づいていただきたい。義務でやっておりますと、大丈夫か?と聞いて本人は「大丈夫です」と答えますが、もし判断力が鈍っている状態でその返事をしていたのなら、「大丈夫ではない」のです。大丈夫というが、悪くしたら大変だ、休むようになったらどうするのだ、部下が元気でないと私は心が痛むよ、という配慮が必要です。本人が大丈夫といっても、管理職の方々には本当に大丈夫かどうかを見極めて下さるようお願いします。

 また、管理職の方は職場環境を健全に保つ義務がありますが、職制に応じて職場環境を改善する権限も持っています。部下が安心して精一杯仕事に専念できるよう積極的に取り組んでください。それが生産性を上げることにもつながりますし、モチベーションや職場の人間関係も良くなる効果もあります。そういう意味でもメンタルヘルスケアのカギを握るのは管理職なのです。

人事、安全及び衛生管理担当部署によるケア

 事業場内産業保健スタッフ等によるケア:セルフケア、ラインによるケアが重要ですが、従業員も管理職も単独ではメンタルヘルスについては余り詳しくありません。また、心の健康状態が深刻に見える場合や職場環境の改善も管理職一人では対応しきれない場合もあるでしょう。

そのために事業場内産業保健スタッフ等によるケアも必要です。より広い視点で、職場環境の実態を把握する。複数の部署にわたる職場環境の改善策を立てる。管理職にメンタルヘルスケアについての必要な情報を提供するなど支援する。メンタルヘルスの相談窓口と対応のルールを定める。メンタルヘルス関連の制度や規定を整備する。メンタルヘルスの教育研修を実施する。個人別の相談、指導を行う。必要があれば、外部の医療機関と連携するなど専門スタッフならではのケアを実施するのです。事業所の規模によっては、事業場内産業保健スタッフが不足だったり、不在だという事業場もあるでしょうから、その場合は、社会保険労務士がその役割を支援します。




メンタルヘルス不調にはサインが出ている

 メンタルヘルス不調が進んでいく過程で、予兆あるいは初期症状といえるような変化が見られます。それを周りの人が見逃さないようにとお願いしたいです。それを、当人は必ずサインを送っている、という言い方がされます。感心を持って見ていれば結構わかるものですが、部下が多かったりする場合にはサインがあっても適切な対応ができない場合もあります。そういう事にならないようにとサインを覚えやすく語呂合わせにしたりします。いろいろなサインがありますが分かりやすいチェック項目としては以下の例があります。

 ・ケチナノミヤ
(ケ)欠勤、(チ)遅刻早退、(ナ)泣き言、(ノ)能率の低下、(ミ)ミス・事故、(ヤ)辞めたいとこぼす

 ・3つのイ   眠れな、食べたくな、だる


メンタルヘルス不調が出たら早めの対応、早めの判断

 メンタルヘルス不調となった場合、本人は我慢して無理をしがちです。そして対応の遅れが深刻な結果をもたらすことがあります。一例としては以下のような事例がありました。同種、同様の仕事をしていた二人についてうつ病の疑いがありました。一人はすぐに休ませて必要な療養と休養をして、3ヵ月後に復帰でき、再発もなく働けています。もう一人は、重要な仕事があるので本人がこれが一段落するまでというので、会社もそれを尊重して療養・休養を1ヶ月先延ばしにしたところ、2年間休職となり、復職するも1ヶ月もしないうちに再び休職してしまいその後は復職のめども立たないという不幸な事例です。

全てがそうなるというわけではありませんが、多数の診療例から言っても早めの対応が功を奏する。身体の病気が早期発見早期治療が大切であるのと同じですね。


メンタルヘルス対策の効果として人間関係の改善

 メンタルヘルス対策が根付くことは、誰もが周りの人の心や気持ちの変化に気を配ることになります。ビジネス環境が仕事の精密さと厳しさを進行させていく中、人間であることに変わりはありません。やはり、人間同士はフレンドリーな関係であるほうが良い気持ち、信頼感、プラス思考で仕事ができるものです。周囲に配慮し、コミュニケーションが活発になることによって、職場の人間関係も良くなるという効果があります。











メンタルヘルス対策の効果として、会社への信頼感と安心

 従業員は給料を貰うためだけに働いているわけではなく、働く上では会社への信頼感、安心感を感じて仕事ができることが下地として必要です。この点は明確に議論されることはありませんが、働きやすい会社であるかどうかの大きな分かれ目といえます。仕事の目的は、最終的には会社に利益をもたらす、公共の利益を追求するなど、自分のためというよりはより大きな目的があるわけですが、最近はその大きな目的のために個人の生きる目的がないがしろにされがちです。

メンタルヘルス対策が定着すると、従業員にも配慮しつつ大きな目的のために一緒に進もうという、組織と個人のあり方がはっきりしてきます。人は組織の中で孤独を感じるというのは切ないものですから、メンタルヘルス対策が一人一人の心の状態を見ていることとなり、「会社は私を大切な人材と思っていてくれている、必要とされている」という喜びを感じ、生きる意義を感じることができます。


うつ病、新型うつ病

 働く人の心の病で一番発生率が高いのが「うつ病」です。心のエネルギーが消耗してしまったような状態で、何もやる気が起こらず、何事も消極的で自虐的となり、身体もだるく疲れが取れない。食欲減退、不眠などの症状もありがちです。集中力に欠け仕事にミスが多くなります。自罰的で、自殺したくなる想念にとらわれやすいので周囲は目を離さないようにする必要があります。病前性格は生真面目でちょっと融通が利かないが頼まれたら嫌と言えず、手抜きを知らないタイプと言われます。

 上記は従来のうつ病の様子ですが、新しいタイプの「新型うつ病(現代型うつ病などとも言われます)」と言われるうつ病も増えています。医師の診断を受けるとうつ病と診断されますが、上記のうつ病とは印象が異なります。気分が消極的になるのは同じですが、病気を自己主張する、他罰的である、仕事を離れると元気になるように見える、知的な判断は鈍らない、など違う病気に見えるという特徴があります。

パニック障害、自律神経失調症など

 パニック障害は、激しい動悸、息苦しさ、発汗、めまい、頻脈などの発作が突然起こる病気です。その原因が他の身体疾患が原因として見られず、精神的な突然襲ってくる発作であることからパニック障害と呼ばれます。発作は10分から1時間以内にほぼ収まりますが、いつ起こるかわからない恐怖、発作が起こるとこのまま全てが終わるような絶望感に襲われるなど精神的なショックが大きく、怖くて外出ができなくなることもあります。

 自律神経失調症は医師の診断書にしばしば記載される診断名ですが、いろいろな症状、例えば頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、不安がなくならないなどの自律神経系の不快な症状があり、身体的異常の無い状態のときに使われる傾向があります。何らかの心の病気が疑われるが、明確でないので様子を見るということと理解しております。



アルコール依存症、薬物依存症、その他の依存症

 アルコール依存症は単なるお酒好きとは違います。ですから、飲まなければよい、我慢しろといってもできないからこそ、依存症という病気なのです。本人も理屈ではわかっていても、どうしてもそれを摂取しないではいられないくらい強い欲求があわられてしまいます。ですから、きちんとした医師による治療が必要です。薬物依存症や他の依存症も同様の通常の性格や判断力を超えて、つい手を出したくなる気持ちが抑えられないものです。家族し親しい人が真心でやめさせようとしても、多くは本人の依存の強さが勝り、結果として裏切られることになる場合が多くそばにいる人が疲れてしまいますから、専門の治療機関に任せるのが良いとされています。


その他のメンタルヘルス疾患

 心の病は他にも沢山あります。躁うつ病、統合失調症、適応障害、不安障害、心身症、人格障害など挙げればきりがありません。医療の専門家はともかく、働く人のメンタルヘルスを労務管理の一環として関わる立場の人は、代表的なものの特徴を理解し、心の病の初期症状が見られたら専門の医療機関にいかに任せるという手順の理解に重点を置くと良いでしょう。







休職規程で休職制度をきちんと定める

 休職制度とは、病気怪我で仕事を休まなくてはならなくなり、それが長期になりそうな場合に一定期間休職にする制度です。多くの会社で採用されていますが、法律上は会社に休職制度を設ける義務はありません。休職の扱いが無いと、仕事ができなくなったら退職せざるを得ないということになり、会社勤めが不安に感じてしまいますから、安心して働くためには整備しておくのが良いと思います。

 休職制度自体は昔から採用されていますが、メンタルヘルス疾患のことを前提としていない制度内容となっていて時代にあっていない場合があります。メンタルヘルスに関係する病気の場合、療養が長引く場合が多いです。医師の見解によりますと3ヶ月程度は経過を見る必要があると聞きました。また、再発するケースも多い。つまり、いったん良くなって復職してもまた休職する可能性があります。このような長期療養や休職と復職を繰り返す場合もありますから、本人と職場にとって時代に合った内容になっていなくてはなりません。就業規則の専門家は社会保険労務士ですから、ぜひ相談の上時代にあった内容に改定しておく必要があります。

長期療養になりがちなので、休職中の対応にも配慮

 メンタルヘルス疾患に罹ると長期療養になりやすい、というのは実態が物語っております。薬を飲んで2日、3日で直るという特効薬は無く症状の改善状態を見ながらの治療・投薬、生活の改善、かたくなな考え方の方向転換を時にカウンセリングなども交えて、少しずつ直してゆくのが一般的です。本人も会社もあせらずに回復を図るものです。

 休職が長期にわたりますと、会社との連絡、接触が無くなってしまいがちですが、それでは直ればまた働ける人の復職に差し支えます。本人からは定期的な報告をしてもらい、会社も会社の動きなどをストレスをかけない範囲で連絡する。もし幸いに良くなってきたなら、復職準備の連絡も必要になってきます。長く休んでいる間の互いのルールをきちんと説明、確認してから休職に入るような手順をあらかじめ定めましょう。





復職準備、復職判断の方法

 休職者が復職できそうだという状態に近づいてきたら、会社も復職の準備を手順を追って進めます。本人は焦りから復職を急ぐ場合もありますから、冷静な判断が必要です。会社の復職の判断材料として、本人の申し出とその主治医の診断書が必要になります。本人と面談して状態を把握するとともに、場合によっては会社の産業医または会社が依頼した別の医師に復職診断を受けてもらう必要も出てきます。主治医は仕事の特性を知らないで診断することもありますから、本人が復職して担当する仕事や忙しさ、心身への負担具合も考慮しなくてはなりませんから、適正な判断をするためです。

 復職が可能と判断されたら、元の業務に戻るのが本人にとって負担が少ないといわれていますが、さまざまな事情を総合的に考慮して判断することになるでしょう。労働条件も休職前と同一であるべきですが、フルタイムで働くのが難しいケースでは労働時間を短くし、相対的に月額賃金は下がる場合もあるでしょう。メンタルヘルス不調で休職した場合は、一律取り扱いはできないこともあるでしょうから、個別の事情を考慮して、すぐに再度の休職とならないよう、徐々に時間をかけて元の状態に戻れるよう復職準備の配慮をしていただきたいです。

いきなり従来通りの勤務復帰を避け、試しながらの復職を

 復職するにしても、それまで療養に努めていた状態から、いきなり100%の状態で復帰できるものではありません。特にメンタルヘルス不調での休職から復職する場合は、とにかく再発のケースが多いのが実態ですから、また悪くなる可能性を抱えつつの復職です。この点を考慮して、可能であるならばリハビリ勤務、試し出勤と呼ばれる自家用車で言う慣らし運転的な段階を入れると良いといわれています。最初は職場に来るだけでもよしとする位の感覚から始め、来て短い勤務時間働く、やがてその時間を徐々に長くしていく。

この場合、無給ですと労働者で無くなり、通勤災害や業務災害の対象外となったり労働法上問題がありますので、本人納得の上で暫定的に試し期間だけの労働条件で働いてもらうと良いでしょう。









メンタルヘルス疾患でも原因が仕事なら労災認定あり

 病気やケガの原因が仕事にあるならば、労働災害となり、会社が治療費や休業中の賃金を補償しなければなりません。通常は、会社が労災保険の適用を受けているはずですから、労災保険の対象ということになります。ただし、メンタルヘルス疾患は原因と病気の関連が明確でないことが多いため、厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」(以下「認定基準」といいます)を定め、これに基づいて労災認定を行うことになっています。この基準に合致すれば、労災として認定されるという仕組みです。

 仕事に関し、重大な災害にあったり、大きな失敗や責任の発生、仕事の量や質の大きさや変化などを元に、その心理的負荷を強・中・弱で評価し、単独または複合的に強に相当する場合は可能性が高いとされます。他に病気の種類やその他の原因の可能性などをあわせて総合的に判断されます。この点、単純な尺度ではないため申請しても審査して労災と認定されるか否か、相当期間がかかることになります。昨年までの古い判断基準での認定までかかる平均的な期間は9ヶ月でしたが、新基準とあわせてこの期間を短縮する改善がなされつつあります。

30歳代に多いメンタルヘルス疾患

 メンタルヘルスについての年齢別調査では、うつ病等のメンタルヘルス疾患に罹る割合が多い年齢は30代が一番多いという結果が出ています。その要因についてはいろいろ言われていますが、とにかく要注意の年齢層です。もっとも他の年齢の人は病気にならないわけではありませんし、昨年のある調査では40代のほうが多いというものもありますから、さまざまなメンタルヘルスの特徴の中で、年齢的な傾向としてご理解ください。













メンタルヘルスの相談専用窓口を設置

 メンタルヘルスは知らないうちに会社の内部で増えてゆき、会社の雰囲気を悪くしてしまいます。放っておくと大変なことになります。ささいなことでも相談できるよう、相談窓口を設置し、それを社内に広く知らせ、担当者には責任をもって受け止め、相談者には何らかの対応を約束するようにしましょう。ただ窓口を設置し、担当を決めただけではその場その場で異なった対応になりがちですから、手順を決め、その手順に従って処理することを、管理職以上の幹部と担当部署では統一した手順で進めることを確認しておくことが必要です

 相談窓口では、窓口対応の基本的な方針として秘密が守られなくてはなりません。メンタルヘルス不調の原因が人間関係にある場合もあり、相談者、相談内容やその職場の関係者の情報が漏れないようにしなくては、相談窓口として信用されなくなり、機能不全に陥ります。個人情報保護の観点からも、情報管理は慎重にする必要があります。小規模事業所のためには、社会保険労務士はこの担当の役割を代行することもできますのでご相談ください。






管理職、人事担当者は積極的傾聴を

 業務遂行上は、人事部門も管理職も、必要な連絡や指揮命令の発信元です。これに慣れてしまうと、部下を観察したり話を聞くという役割を果たす場合は受信側という違う立場になりますから、頭が切り替えられないこともありえます。そのために、積極的傾聴(アクティブリスニング)が重要です。これには研修なり、訓練が必要です。人は話をするのは得意でも、話をひたすら聞くというのはなかなかできないものです。上司が「さあ何でも話してくれ」というので、部下が話し始めて全体の1割しか話さないうちに上司がそれを受けて話し始めて結局その10倍くらいの説教を聞かされたという笑い話もありますが、実は笑えない話で実際には非常によくある話です。

 集合研修で、積極的傾聴の説明や傾聴のテクニックを知り、実際に模擬体験で傾聴に徹することを学び、仕事の中で実践していくことで傾聴が上手になります。傾聴が上手にできるようになれば、部下や同僚の話を聞いてあげられて、職場のメンタルヘルスの改善につながります。職場の風通しも良くなり、社風も明るくなり、何でも相談できて悩みも打ち明けてもらえるようにもなりますし、互いの人間理解に大きく役立ちます。発信元と受信側の切り替えも覚えると人としての幅が広がります。小規模事業所のためには、社会保険労務士が積極的傾聴の研修をすることもできますのでご相談ください。

アサーション、しなやかな自己主張を学ぶ

 従業員として働くということは、ピラミッド型の組織の中で上からの指揮命令に従って仕事をするということですから、多少のストレスは仕方ありません。それでも、個人的な性格にもよりますが、考え方が柔軟性に欠けたり、相手の主張を受け止めるだけですと、メンタルヘルス不調気味になってきたときに、周囲とのコミュニケーションもストレスをためる様になってしまい、さらに悪く作用する場合があります。受け流すとか、受け止めて柔らかに主張するべきところは主張するほうがメンタルヘルスのうえでは健康的です。

 アサーショントレーニングは、柔らかな自己主張と説明されるアサーションを身につけるコミュニケーションの訓練です。マンガのドラえもんをご存知の方は、その登場人物であるのび太君、ジャイアン、しずかちゃんの例で説明されるとわかりやすいので良く引き合いに出されます。ジャイアンの一方的な主張に対して、それに反論できないで言われたとおりにするしかないのび太君ですが、悔しくていつもドラえもんに泣き言を言って、ドラえもんの未来のアイテムで解決してもらってばかり。そこへいくとしずかちゃんは、ジャイアンの言うことをいったん聞きますが、ダメな所はダメときちんとジャイアンに言います。このしずかちゃんの対話の仕方がまさにアサーションであると説明されます。仕事上だけでなく、人と人が接する上でも相互理解のために大変役に立つコミュニケーション方法です。

ストレスはためすぎないで、上手に対応して解消

 ストレスはゼロということはありません。ストレスがまったく無い状態では、人はだらけて前向きの活動ができません。しかし、ストレスをためすぎてしまうと病気になってしまうこともあります。つまり、適度なストレスをキープするような生活が一番良いわけです。活動的な生活をしていれば、ストレスがたまっていくのは仕方ありませんから、それを溜まりすぎないうちに減らしていく。その減らす方法がストレスコーピング(ストレス対処法)です。例としては、身近なところでは音楽や美術などの趣味もそうです。でも特別趣味らしい趣味の無い人もいますから、そんな人にはストレッチ、軽いスポーツ、瞑想やヨガ、自律訓練法、座禅など様々なものがあります。それを習慣付けることで、自分なりのストレスコーピングをしていることになります。

 決まった方法が良いというより、人によってそのストレスを軽減するのに効果的なやり方は違いますから、自分なりのやり方を見つけるのが良いです。デスクワークであるか、外交が多いか、体力を使う仕事かでもやり方は変わってきますね。ストレスを解消して、また明日からがんばろうという生活が健康的ですし、逆にいつものやり方でもストレス解消しない場合は危険信号ともいえますから、周囲に相談したりして早めの対処が必要ということにもなります。



休職、退職の収入補填、傷病手当金、障害厚生年金

 メンタルヘルス不調となり、休職する場合は仕事ができないので給料が減ったりもらえなくなったりします。これは仕方ありませんが、その収入面を補う制度があります。(ご注意)現在加入中の健康保険、年金制度によっても違いがありますので、ここでは協会けんぽ管掌の健康保険制度と厚生年金保険について述べます。また詳細な説明はそれぞれの制度のサイトに譲りますので、アウトラインのみの記述になります。ご了承ください。

 傷病手当金:私傷病で会社を長期に休む場合は、健康保険制度から傷病手当金が支給されます。支給される額は1日当たり標準報酬日額の3分の2です。標準報酬日額は雑な表現になりますが、平均的な月当たりの給与額を30日で割った金額です。支給期間には限度があって、支給開始から1年6ヶ月です。

 障害厚生年金:傷病が長期にわたる場合や一定の障害に該当すると認められた場合に、支給されるのが障害厚生年金です。厚生年金の被保険者期間中にかかった病気が原因である、初診日や申請時点での医師の証明書が受けられる、保険料に滞納が無いなどのいくつかの要件を満たしていることが必要です。病気が原因で退職を余儀なくされた場合でも、要件に該当すれば支給されますが、一定の審査がありますので場合によって不支給の決定が出る場合もあるのが残念な点です。しかし、療養が長引いて会社の休職期間中に直らずに退職を余儀なくされた場合でも、長期に収入を補填してくれる制度としてありがたいものです。

うつ病に処方される薬

 メンタルヘルス疾患の治療には様々な薬が処方されます。身近なところでは、睡眠薬、抗うつ薬、漢方薬などがあります。人によって効果のある薬もあれば、効果の出にくい薬もあります。効果の出にくい場合に服用をやめてしまうと治療が途中で止まってしまうし、病院を変えてしまう人もいるので、治療としては後戻りになります。1ヶ月から3ヶ月くらいはきちんと通院治療と処方された薬を服用して効果を確かめるべきとのことです。私の知り合いには自分に良く合う薬がわかって、それからは仕事もできるようになった人もいます。

 特に抗うつ薬は副作用の少ないものが処方されて治療効果が以前より上がったと言われています。現在の主流は、神経伝達物質再取り込み阻害薬という、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の神経細胞間の伝達作用に働くものです。自分で服用した薬が期間経過の中でどのような効果があったか、なかったかということも医師にとっては重要な情報ですから、治療の中で医師との情報共有も大切だそうです。










劣悪な労務管理、残酷な採用面接

 若者の就職活動の中で、労務管理の劣悪な企業のことをブラック企業と呼んで注意を促す情報がインターネット上で見られるようになりました。精神的にタフでない若者はそのような会社に就職したため、メンタルヘルス不調になってしまうこともあるそうです。労務管理が劣悪ですから、そのまま退職を余儀なくされてしまって無職になるという病気とあわせて二重の不幸です。若者には注意してほしいとともに、そのような会社を良くするのは相当な年数がかかりますから、早めに自主的に退職するようにしてほしいです。心身が元気であれば、また仕事は探せます。社会保険労務士としては会社の問題点を正す、ということも相談を受けますが、まず大事なのは健康であることです。

 また、最近では圧迫面接という嫌な言葉を聴くようになりました。過度に過激で耐え難い質問や発言を面接者に発する面接方法です。精神的なタフさを試す目的など企業側にも理由はあるのでしょうが、人としての尊厳を損なうような面接方法には反対です。このような経験をした事実は、受けた本人は生涯忘れません。今は就職難で若者は耐えていますが、間違ったやり方がいつ槍玉に挙げられないとも限りません。節度ある採用活動を切に願います。

治療は医師へ、予防・休職・復職の相談は社会保険労務士へ

 働く人のメンタルヘルスでは、心の病の治療には医師等の専門化が必要ですが、それ以外の場面は労務管理・安全管理そのものです。窓口設置、メンタルヘルス研修、4つのケアの推進など予防措置。休職制度の整備と運用、復職の判断や準備、再発防止のための体制作り、健康保険制度や労災保険制度上の配慮など全て労務管理、安全管理の政策です。

 小規模の事業所では、社会保険労務士がこれらの事の相談相手、実施協力者として機能いたしますので、ご相談ください。


















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