埼玉の社会保険労務士法人あおば関口事務所


セクシュアルハラスメント対策が必要な時代です
セクシュアルハラスメントの問題点
対価型セクシュアル・ハラスメントとは
 男女平等の国、現代の日本においても、女性の社会進出について不平等な点がまだあります。一方、隣国やアジア、ヨーロッパの多くの国で女性元首が普通に政権を担当しています。もちろん、日本でも発言力のある女性政治家、実業家がたくさんいます。もっともっと持てる力を発揮してもらって、日本が元気になるよう活躍して欲しいものです。セクシュアルハラスメントはその女性の力を阻む恐れがあり、最近では男性でもセクシュアルハラスメントの被害者になる場合もあり、企業で働く人の力を落としてしまいます。

 セクシュアルハラスメントは知らないうちに会社の内部で増えてゆき、会社の雰囲気を悪くしてしまいます。放っておくと大変なことになります。疑わしいことでも相談できるよう、相談窓口を設置し、それを社内に広く知らせ、担当者には責任をもって受け止め、相談者には何らかの対応を約束するようにしましょう。社会保険労務士は小規模企業の為にこの担当の役割を代行します。
 セクシュアルハラスメントは大きく分けて、「対価型」と「環境型」に分類されます。
環境型は、性的な言動に対し、女性労働者の対応により、その労働者が、解雇、降格、減給、懲戒処分などの不利益を受けることです。(厳密に言うと不利益を受ける側の多くは女性、今はケースが少ないですが男性労働者もありえます)

 「対価」と言っても、金銭だけではありません。広い意味で様々な不利益を被ること全般を総称して「対価型」と呼びます。

 例えば、職務上の立場を利用して強く男女交際を求める、相手の体を触るなどしたところ、それが拒否や抵抗をされたら、腹いせのため、人事考課を悪くつけたり、架空の職務上の責任を問うて給料を下げる、あるいは降格させる、解雇などをすること等です。


男女雇用機会均等法における事業主、経営者の義務
環境型セクシュアル・ハラスメントとは
 男女雇用機会均等法により、使用者(事業主、会社)にはセクシュアルハラスメント防止のための配慮義務があります。以下のことを実施しなくてはなりません。
(1)職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあって はならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の 内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。 また、広く相談に対応すること。
(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(6)事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
(7)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
(8)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
(9)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行って はならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
 「環境型」セクシュアルハラスメントとは、性的な言動により、それを見たり聞いたりした労働者が不快な思いをして、それが就業する上で支障となるような事を言います。

 例えば、わいせつな話を周りに聞こえるようにする、職場で体を触り苦痛な思いをさせて労働意欲を減退させる、労働者に関する性的な話題を意図的に流布させる、ヌード写真を自分以外の人が見えるようにする(パソコンの壁紙やスクリーンセーバー等も)などです。

 仕事に専念する環境をこわしたという事になるのです。






セクハラ対策の方針の明確化とその周知、啓発
セクシュアル・ハラスメントを受けたときは
 会社の意志を明確に示すものに、セクシュアルハラスメント防止の取り組みを明記することが大切です。経営理念、倫理綱領、就業規則に織り込むなどが考えられます。

 その様な多くの決まり事がある中の一部とすることも良いことですが、さらに進んで、セクシュアルハラスメント防止を特に訴える媒体を使うというのもより方針が明確になり、同時に周知されることになります。例えば、「セクシュアルハラスメント防止宣言」というようなポスター、掲示物文書を作成するなどが推奨されています。これを自社のウェブページにも掲載すると、社内だけでなく社外にも会社の方針が知らされることになり、企業の社会的責任も企業評価の大きなポイントとなっている現代社会では、好意的に受け止められるはずです。

 また、啓発のためには社内の研修を実施するのが良いです。全員が同じ内容の話を聞き、共通認識とすることで、会社が本気で取り組むことを感じ取ることが出来、社内に方針が浸透します。





 相手の軽率な行為の範囲であれば、嫌であること、不快であること、を明確に意思表示することで相手が反省するということもあります。しかし、拒否の意思表示が不明確だったり、相手がそれ気がつかない場合などは、度重なったり、エスカレートしたりする恐れもあります。その行為を受け入れていると誤解されないよう、まずは明確な意思表示をすることが必要です。

 認容できない行為を受けた場合は、自分の上司や信頼できる同僚、そして会社の相談窓口に相談しましょう。そして、会社がきちんと対応してくれることが確認できたら、会社とともに解決を図りましょう。ところが、会社がきちんと対応してくれない場合もあります。会社の営業成績的には加害者が良い人材であったり、被害者の申し出を過小評価したり、理由はいろいろあるでしょうけれども、会社がきちんと対応してくれないという話は良く聞きます。私も相談されたことがあります。

 社内で解決できなければ、社外に目を向けることになります。各都道府県にある労働局の雇用均等室が代表的な行政の相談部署です。労働局の総合労働相談センター、都道府県の労働相談所、社会保険労務士会の総合労働相談センター、その他様々な団体が相談窓口を設けていますし、個別の弁護士や社会保険労務士に相談するケースもあります。

 このように、解決に協力してくれる場所はありますが、自分の被害をきちんと伝えられないと対応しにくいものです。記録を取る、録音する、このような解決を望むと伝える、など自分でも一定の努力が必要です。いつ何時被害者になるかもしれません。自分の対応方法を想定することも大事です。
セクシュアル・ハラスメントの相談、苦情への対応を明確化
都道府県 労働局の雇用均等室
 会社の対応としての第一歩としては窓口が必要です。できれば、独立性の高い部署として存在している方が、窓口担当者が周囲の関係人に遠慮しないで適切な対応が期待できますし、担当者が継続的に専門性を高める研修受講なども期待できます。小さな組織の中小企業には難しい面もありますがあくまで理想の話です。いずれにしろ、窓口を設置して、担当者を配置することは必要です。

 相談、苦情を受け付けるとなると、大変難しい問題ですから、窓口と担当者に任せっきりというわけにはいきませんので、会社として解決を図るには衆知を結集する方が良いです。このためには、セクシュアルハラスメント防止委員会を設置しましょう。複数の委員からなる解決のための組織が出来て、解決への流れが確立します。

 受付、事情聴取、事実調査、処分の検討、処分の実施、外部機関・外部専門家への相談・依頼、個人情報やプライバシーへの配慮など幅広い対応が必要となります。

 男女雇用機会均等法その他の新しい分野の専門的機関として、各都道府県労働局に1つ設置されています。行政機関であるとともに、紛争解決機関でもありますので、トラブルに介入して紛争を解決すべく努力してくれます。配置されている職員もセクシュアルハラスメントの問題を配慮して、現在のところ女性職員が多くいます。

 会社側、労働者側、当事者双方に対し、助言、指導、勧告を行います。セクシュアルハラスメント解決のための一番頼りになる機関と言えます。



相談者、苦情があったらすみやかに対応する
雇用均等室による調停
 会社の窓口へは、直接、電話、文書、手紙、メールなど様々な相談形式で情報が届きます。多様なニーズに対応できる窓口であることが大切です。そして、問題点を整理し、まず第一には止めること、防止することです。そして、根本的解決のため、すみやかに社内の委員会に受け渡す、もしくは外部の専門家・専門機関に解決をゆだねるなど適切な判断をし、実行します。

 雇用均等室の助言、指導、勧告は強制力がないので、うまく解決しない場合もあります。解決しない場合は、調停という場を設けてくれます。労働問題の専門家による調停委員会が当事者双方の事情を聞き取り、調停案を提示します。調停案は命令ではありませんが、当事者双方に受け入れるよう勧告をして解決を図ります。


相談者、被害者のプライバシーの保護が必要
紛争調整委員会によるあっせん
 プライバシーの保護はセクシュアルハラスメント対策の大前提です。安心して解決されると理解してもらうには、防止のための方針を出す段階で、プライバシーが保護されることも併せて明記する必要があります。受付窓口も防止のための委員会はもちろん、外部の専門家・専門機関を含めて、相談をする人も、相談を受けたあらゆる人にも周知されていることで、誹謗中傷・批判にさられずに防止、解決が図られます。

 厚生労働省の各都道府県労働局の総合労働相談コーナーに申し込むことによって、紛争調整委員会によるあっせんが受けられます。これは、雇用均等室の対応とは別のものです。総合労働相談コーナーでは、あらゆる労働問題の解決を図っていますが、あっせんはあっせん委員会によって、当事者双方の話を聞いて、あっせん案を作成し、当事者に提示して、受け入れるよう提案するものです。セクシュアルハラスメントの解決が専門ではありませんが、総合労働相談コーナーの相談から進めていけるので、気軽に相談してやはり積極的に解決を図るべきだと判断されたら、あっせんを申し込むという手順を踏めます。


加害者の責任
紛争拡大、民事裁判へ
 加害者は責任が重いです。もし、法律的な紛争になって責任があるとされたら、法律的にも社会的にも大変です。大切な人生をムダにしないためにも、誘惑に負けたりしない、気が緩んでこのくらい良いだろうと勘違いしないようにしたいものです。民法による、不法行為責任、損害賠償、名誉毀損などたくさんの責任を問われます。



 多くの解決手段がありますが、それでも解決しない場合は裁判です。雇用均等室による解決手段、紛争調整委員会によるあっせん、その他多くの解決のための機関や解決を援助する団体の努力にもかかわらず、解決しなければ民事訴訟を提起してでも解決するという人あるいは会社もいます。裁判は公開ですから、プライバシーや企業秘密がさらされることもあり、個人にとっても会社にとっても厳しいものです。時間的、金銭的、人的コストも大変大きなものになります。やはり、そうなる前に解決するよう当事者全員が努力した方が良いと思います。


企業の責任が問われることも
傷害罪等刑事処分もあり得る
 また、会社も使用者責任、共同不法行為、防止対策を怠った債務不履行など問われる場合もありますので、対策には真剣に取り組みましょう。

 セクシュアルハラスメントに至る行為により、刑事処分を受ける場合だってあります。愛憎が複雑に絡み合ったセクシュアルハラスメントが行き過ぎたところまで行くと、もはや犯罪というレベルに至ってしまうのは怖い話です。


セクハラを受け、メンタルヘルス労災として認定の可能性
案件によっては女性の対応が必要、女性社労士を紹介します
 セクシュアルハラスメントの被害は、精神的なダメージが大きいため、場合によって被害者が長期的に苦しむことがあります。身体のケガを伴うセクシュアルハラスメントの治療も労災と認められるケースがありますが、心に深い傷を負わせることもあり、それが労災と認定される場合もあるのです。セクシュアルハラスメントに限らず、うつ病などのメンタルの病は、それが労災であるか厚生労働省が定めた精神障害等の労災認定基準によって判断されます。この認定基準に、セクシュアルハラスメントを受けた場合が明記されているのです。

 現在のところ、セクシュアルハラスメントの被害者の多くは女性です。安心して相談して、解決を図るには専門家も女性である方が良いというご意見はもっともです。私には県内、県外問わず女性である社労士仲間がたくさんいますので、ご要望があればご紹介しています。









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